路地裏ブック

本の感想

藤ダリオ『放課後デッド×アライブ』感想

放課後デッド×アライブ (角川ホラー文庫)

放課後デッド×アライブ (角川ホラー文庫)

あらすじ

クラスで忘年会をしていた3年A組の生徒は、突如命をかけたデスゲームに巻き込まれる。
生き残れるのは男女ペアの1組だけ。
ルール違反や脱走をしようとすると即ロスト(死)される。
主人公の啓太は、そりが合わない彩香とともに勝者を目指す。
最初の対戦相手が親友と、啓太の憧れの女性とは知らずに……。

感想

藤ダリオの小説を読むのはこれで3作目になるのだけど、どれも似ているなという印象。
作家性というべきなのだろうか。
男女ペアを組みたがることと、映画の雑学を入れたがるところとか。

一番残念に思うのは、ペアの相手を見下すことが多いということ。下げて上げるパターンなのだけど、毎回わりと不快に思う。
よほどの天才ならいいんだけど、見下す側が大したことないパターンが多くて、読んでいて面倒くさく思う。

デスゲームのゲーム内容としては「放課後デッド×アライブ」は、悪くはないという感じだ。
内容としてはつまらないものも多いのだけど、毎回主人公がピンチになったりするので、どう切り抜けるかという点でおもしろい。

基本的にはおもしろく読めた。暇つぶしにちょうどいい。デスゲーム系の作品はあんまりないので、そういう意味でも楽しめた。

ここからネタバレ

ストーリーの落とし所は、ノアの方舟なんだけど、無理があるだろうと思ってしまった。
シェルターが一つなわけないし、作文を読んで選んだ? はい? という感じ。
自分の保身を考える政治家が、自分の命を守ろうとしないわけがない。全員が全員「日本の未来のために高校生に託そう」などと、考えないだろう。

斬新なオチでもないので、余計にがっかりした。無理があっても独創的なオチだったらまだ評価できるのだが、わりとありがちなオチだと思ってしまった。

学校が本物かどうかも語られなかったし、どこか消化不良を感じてしまう。玲奈の正体も調整役というのはわかるのだけど、そのわりにかき乱してるだけだし、結局どういう存在なんだと思ってしまった。子ども諜報員?

おもしろいだけにそういう点は残念だった。

さくらももこ『ちびしかくちゃん』感想 ある意味やさしい世界

ちびしかくちゃん 1 (りぼんマスコットコミックス)

ちびしかくちゃん 1 (りぼんマスコットコミックス)

ちびしかくちゃんとは?

ご存知「ちびまる子ちゃん」の公式パロディ。作者は同じさくらももこ。顔が丸いちびまる子ちゃんと比べて、「ちびしかくちゃん」は顔が四角い。通称「しか子」が主人公。
開き直る系のまる子と比べると、しか子はひたすら自虐的になる。
というより周囲がしか子に対して理不尽に厳しすぎるため、しか子が自虐にならざるをえないという感じだ。

10分遅刻しただけで激怒する友人だまちゃん。
「しか子 あんたはインスタントラーメン以下だよ」と罵る。

しか子に非があってもなくても「しか子が悪い」となるさくら家。

ちびまる子ちゃんの悪夢と言うようなブラックユーモア作品になっている。

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今村夏子「木になった亜沙」感想 文學界10月号

木になった亜沙を読む

やはりこの作家はただものじゃない。
「木になった亜沙」は、あらすじだけ追えば「変身譚」。タイトル通り、人間が木になる話だ。
一見するとよくある話。いかにも現代文学作家が書きそうなものだが……。
安心してほしい。ただの変身譚ではない。今村夏子色に染まりまくっている。

24時間テレビもびっくりの半生ダイジェスト

小説は保育園児の「亜沙」からスタートする。
ひまわりの種をお菓子にしたけど友だちが食べてくれない。好きな子にクッキー焼いたけど食べてくれない。
実はこの「食べてくれない」ということが、小説のキーワードになっていく。

なぜか亜沙が作るものを誰も食べてくれないのだ。
亜沙はこのことに薄っすらと気付いていてショックを受けている。

「食べてくれない」っていうのがテーマの小説って他にあっただろうか?
この「食べてくれない」理由も、色々と考察できておもしろいところ。
小説の序盤で母親が入院をしはじめ、やがて死んでしまうんだけど、まさか……と思ってしまう。
今村夏子あるあるだろうか。

母親の死のあと、叔母夫婦に引き取られ、赤ちゃんに母乳をあげようとしたところを見られ、高校でいきなりグレる。そして寺に行かされる。

これがもうノンストップで展開される。だらだらとした感傷なんて興味ないとでもいうかのようである。
おっと、この小説で「赤ちゃんのシーン」はわりと重要だ。
恐る恐るミルクを作ったら赤ちゃんがごくごく飲んでくれるのだ。
亜沙にとっては貴重の「食べてくれたシーン」である。
恐らく物心ついていないから善悪の区別がついていないんだと思う。

寺を離れることになる亜沙。最後にスキーに行こうと誘われて滑る。死ぬ。絶叫しながら死ぬ。ちなみにタヌキにチョコあげようとして拒否られます。
死人の顔に、木の実が落ちてくる。あ、木になったら食べてもらえるんだ、と思った亜沙。
その願いが通じたのか、見事「木」になります。ぱちぱち。

もちろんここで終わりではなく、ここまでが前半戦である。
ここから「木」になって→「○○」になって、そしてラスト。
「食べてくれない」がこうなるのかと思うと素晴らしい。

後半戦は文學界10月号本誌でどうぞ

文學界2017年10月号

文學界2017年10月号

普段エンタメしか読まない人でも、おもしろいんじゃないかと思う。
今作だけを見れば、ぎりぎり「倉橋由美子」が近いんじゃないかな、と感じた。
ブラックユーモア感ある。

芥川賞について

「木になった亜沙」が芥川賞とれるかと思うかといえば微妙。恐らく「星の子」でとると予測した編集者が、受賞後第一作としてお願いしたのだと思う。芥川賞とるには短すぎる。ただ、高橋弘希の「短冊流し」が候補になったことを思えば、候補にはなるかもしれない。変身譚としては本谷有希子の「異類婚姻譚」が一昨年くらいに芥川賞をとっている。その異類婚姻譚に比べると「木になった亜沙」の方が出来自体はいいかなと印象。

藤ダリオ「山手線デス・サーキット」感想 山手線を題材にしたデスゲーム

山手線デス・サーキット (角川ホラー文庫)

山手線デス・サーキット (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤ダリオ
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/12/22
  • メディア: 文庫
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あらすじ

高校生クイズ選手権で優勝した修平は、気づくと山手線の電車の中にいた。左には見知らぬ女性。2人は手錠でつながられており、首にはタイマーつきの時限爆弾が仕掛けられている。携帯に送られてくるゲームメーカーのクイズに答えられなかったら死亡。しかも、一問間違うごとに人質の親友が射殺されてしまう。
主人公の修平は、クイズメーカーのクイズと指令をクリアし、無事に生還できるのか?

概要

山手線を使ったデスゲームもの。
関東在住だとわりとイメージしやすいかもしれない。山手線を知らない人(いるのか?)は○になっている路線を想像するとわかりやすい。
高校生クイズ選手権のメンバー4組が争うという構図。

主人公とそのペアとの相性が悪い

ペアは親友の姉なのだが、主人公は性欲の対象としか見ていない。親友だったらどれほどいいかと繰り返しぼやく。ペアの女性もなかなかマイペースで緊張感がなく、見ていて少し苛々としてしまう。主人公は主人公で馬鹿を見下している感と、変な小細工をして自らをピンチにする、という意味不明さ。この2人に感情移入しろという方がむずかしい。

いきなり妨害する小心者

対抗チームの坂上という度胸のない男(主人公評)が、いきなり主人公を突き飛ばす。優勝しなければ「死」が待っているとはいえ、すごく回りくどく感じてしまった。収録では緊張して実力を発揮できなかった坂上が、こんな窮地で奇襲に出るかといったら、びびって出ないほうが自然。まだ坂上の思考がわかれば納得できるのだけど、それもなし。なら最初から悪どいやつにしとけばよかったのでは?ともやもやした。

「んー」というラスト

裏表紙には「ラストがかなりすごい」と書いてあるが、そうか?という印象。むしろ呆気ないと感じてしまった。決勝に期待させておいて、これなら直接対決の方がよかった。

不要な地の文

全体を通してみれば読みやすい。ただ、ときどき異様に長い地の文をさしこんでくることがあり、げんなりした。特に必要な長さとも思えない。主人公がぐだぐだ考えこんだり、不要なお色気シーンが混入されたりする。

普通におもしろい

なんだかんだケチもつけたのだが、首に時限爆弾をつけながらクイズや指令をこなしていくというシチュエーションはおもしろい。
クイズの意図も「なるほどなあ」という感じだ。
緊張感や絶望感がもう少しあると、なおよし。

「僕らが毎日やっている最強の読み方」

 

 

新聞は2紙読む。1紙は定期購読で、もう1紙は買う。身銭を切らないと身につかないから。

身銭を切るのは、書籍も同じ。お金を払うからこそ、もとを取ろうと読まざるをえなくなる。

ネットの情報は、もともとは新聞などのもの。精度も低い。新聞を読むのが一番正確であり、コスパが高い。

かといって、ただ新聞を読んでいるだけでは身につかない。基礎を理解していないと、頭に定着しないからだ。

基礎を学ぶのに一番いいのが教科書。教科書は本屋でも手に入る。

panpanya『動物たち』感想

動物たち

動物たち

いつもよりカラー多め。警察官スタイルの主人公も見れる。安心のpanpanyaワールド。

とくに気に入ったのは最後の方の「グラスホッパー・アドベンチャー」というお話。
川で溺れているバッタのために笹舟を作ってあげる。そのまま流されていくバッタを追いかけるという内容。

川ってどこまでも行くんだろうと考えたことあったな、と懐かしくなった。

「動物たち」とタイトルになっているとおり、今回は動物が多め。亀やらムジナやらが出てくる。

宮崎夏次『夕方までに帰るよ』感想

はじめて宮崎夏次系の漫画を読みました。買った理由は、なんとなくおもしろそうだったから。読んだ感想は、なんだかおもしろかった。
家族の話?ということになるのかな。
両親がイカサマ教団に洗脳されていたり、アパートで姉が引きこもっていたりする。両親は畑を作るため平気で家を半分壊すクレージーさをもっている。だけど主人公の柊一くんは、幸せそうな両親を見て「喧嘩ばかりする前よりマシだからいい」と思う。
姉のアパートに訪れたら、段ボールで要塞を作って引きこもっているで、よくわからない。しかも引きこもりを飼っているという男まで現れる。
不思議な世界観だった。絵柄も構図も見たことあるようで見たことないというか。
一見、大学生の落書き漫画なんだけど、センスがずば抜けている。
この人しか描けないんだろうなと思わせて、かつ、おもしろかった。
先は読めないんだけど、ストーリーはまとまっていたような……。柊一くんの感情を真面目に描いてあるからかもしれない。
番外編の終わりの一コマがとても好き。
第六話の姉の回想シーンがとてもよくて「誰のものか知らないが葬式を毎日催して遊んだ」という文章が気に入った。

夕方までに帰るよ (モーニング KC)

夕方までに帰るよ (モーニング KC)