路地裏ブック

本の感想

矢野龍王『極限推理コロシアム』感想 密室殺人ゲーム

極限推理コロシアム (講談社文庫)

極限推理コロシアム (講談社文庫)

デスゲーム×王道ミステリー

「今から始まる殺人事件の犯人を当てよ」
監禁された七人の男女に「主催者」から突然そう告げられる。
しかも監禁されているのは彼らだけではなく、別の場所で同じように七人の男女が監禁されていた。
「夏の館」と「冬の館」合わせて14人。
それぞれの犯人を言い当てないと、全員死刑になる。
解答は一回のみ。
主人公、駒形は「犯人」を見つけ出し、生きてこの場から出ることができるのか。

舞台設定がなかなか見事で、おもしろい作品だと思った。
とくに秀逸なのは「冬の館」というもう一つの館の存在。彼らとの通信による情報だけで「冬の館」の犯人を当てないといけないっていうのが斬新だった。

ミステリーとしての難易度はそう高くない。
恐らく大半の人が途中でトリックの正体に気づくと思う。
ミスリードはいっぱい張ってあるが、どれもすぐ「違う」と気づくだろう。

ただ、フェアではないような気もした。誰が犯人かはわかるのだけど、その証明の仕方が歯切れ悪い。
唯一無二の証拠があって犯人を見つけるわけではないので、作者のさじ加減のような気がした。

トリックの方が重要であり、犯人はどうでも良いといっているようなものだ。残された謎に対しても憶測が多く、すっきりとしない。

ただおもしろい作品であるのは事実なので、主人公と一緒になって「犯人探し」をしてみるのも悪くないだろう。

ネタバレあり感想

ここからネタバレありになります。
犯人もトリックについても語っているので、未読の方は読まないようにしてください。

気になってしまう点があちこちあって、まず第一。
冬の館の4人のアリバイについてが謎。作中では犯人2人が協力して偽証したのだろうという憶測が述べられているけど、実際どういうふうなアリバイだったかが知りたかった。

第二。
なぜ、滝本は飯田の部屋で死んでいたのか?
しかも顔を潰されていたのがわからない。
最初、滝本が犯人で、顔を潰したのは死体を自分(滝本)に見せかけるためだと思ったのだけど、ミスリードだったようだ。
しかしミスリードはミスリードでも、犯人にはスリングショットがあるのだから撲殺する必要がない。顔を潰す意味がない。
死んでいる飯田の部屋に、犯人がやってきたのも謎だ。

第三。
なぜ天井裏で格闘したとき、主人公を駒形を殺さなかったのか?
気絶した彼を殺して、どこかの部屋に落とせばすむのではないだろうか?

第四。
そんな簡単に記憶を消せるのか?
一週間分だけ器用に消すことができるのは、かなり現実離れしている。

第五。
天井裏の足跡はなんで一つだったのか?
主人公は、天井裏での格闘についてもう一人の犯人にやられた、と推測しているが、もし彼らが2人で「夏の館」に来ていたのなら足跡は2つあるはず。

と、疑問点がいっぱいある。作者が読者を騙すだけのミスリードが多くて、そこは気に食わなかった。なんというか、作中との出来事に上手く合っていないため、「違和感」として残り続けてしまった。
あと、ラストの微妙な再会もご都合主義的で嫌だった。この手の「記憶を消される」ものではありがちなオチに「うぇ」となった。

ただ、こういう設定は大好きなのでどんどん書いて欲しい。